リチウムイオン電池


高容量化

 リチウムイオン電池は正極材料の改善、充電電圧を4.1Vから4.2Vに上げることなどにより、ここ数年、年率10%以上でエネルギー密度が上昇してきました。現在の改善の中心は負極にあり、今しばらくは年10%近い容量増が続くものと見られます。しかし、特にコバルト系リチウムイオン電池ではこの容量増は安全性との戦いであり、安全性の面から見てほぼ限界のエネルギー密度に達していると見られます。
 ポリマー型では現状1000mAh以下がメインですが、大型化の試みが続けられており、一部のメーカーから発表されています。どこまで安全性をキープして大型化できるか興味が持たれます。

新組成電池への期待

 リチウムイオン電池も、ポリマー型も高エネルギー密度化が進展していますが、現状の化学系では早晩頭打ちとなることは明らかであり、次世代電池への取り組みが各メーカー、研究機関で続けられています。2〜3年後には金属リチウム電池など飛躍的にエネルギー密度を高めた次世代電池が登場することが期待されます。

コストダウン

 国内携帯電話ではリチウムイオンが100%のシェアを占めていますが、海外、特にGSMでは50%以下であり、この最大の理由はコストです。ニッケル水素電池パックと比較すると、セル自体のコスト差に加えてコバルト系リチウムイオン電池に必須の保護回路のコストが大きな問題となります。安全性上の観点から過充電保護を省略できるものは、一般的に「セイフセル」と呼ばれるようになっていますが、これにミートできるものはポリマー電池とマンガン系リチウムイオンであるとされています。海外携帯電話でリチウムイオン電池の比率を高めていこうという動きがありますが、保護回路省略とセル自体の低コスト化による電池パックのコストダウンが強く要請されています。また、リチウムイオン電池はこれまでほとんどもっぱら日本製が市場を席巻していましたが、最近は韓国、中国、台湾製の電池が安価で出回りはじめました。まだ性能的、および安全性上問題のあるものがありますが、それらとの競合を含め、2001、2002年はリチウムイオン電池の将来を決める正念場の年と言えるでしょう。

安全性

 安全性の問題に関しては、最近でも円筒リチウムイオン電池を中心として数件のリコールがありました。2001年5月に発表されたDELLのノートパソコン電池の回収は29万台近くが対象で、大きく報道されました。電池自体が火元でなくても、導電性を有する電解液の漏液によって周辺プリント板がショートしたり、プリント板自体の製造上の問題でショートを起こし、電池に貯蔵された大きなエネルギーのために発熱、発火します。最近では携帯電話電池パックに半田くずが入っている可能性があり、発熱、ケース変形のおそれがあるとのことでソニーの携帯電話56万台のリコールが起きています。電池自体の安全性のみならず、電池パックトータルの信頼性が問題となります。安全性を無視した小型化、低コスト化のために事故を起こして、大きな将来性を有するリチウムイオンからユーザーを引き離してしまうことがないよう、強く念じてやみません。